時間が形になる条件|DUREEの家具づくり
完成した家具を見ると、その形は最初からすべて決められていたように見えるかもしれません。
しかしDUREEでは、デザインすることと、完成形を完全に固定することを同じものとして考えていません。
人の手。
素材。
環境。
偶然。
時間。
複数の条件を設計しながら、その相互作用の中で形や表情が生まれる余地を残す。
偶然に任せるのではなく、美しい偶然が起こり得る条件をつくる。
DUREEにとって、それもデザインです。

■ Control and Contingency|制御と偶然
DUREEは、すべてを偶然に委ねるブランドではありません。
家具として必要な寸法、機能、強度、構造。
それらは設計します。
一方で、完成したもののすべてを完全に均一化することも目的としていません。
どの領域を制御し、どの領域に素材や人の手、環境が作用できる余地を残すのか。
その境界まで含めて設計します。
Rock Seriesであれば、家具として成立する基本的な寸法や機能を設計した上で、削る順序、道具の角度、加える力、素材の状態、制作者の判断が最終的な輪郭に加わっていく。
Sabi Lounge Sofaでは、基本形を設計した上で、樹脂モルタルを扱う人の手、乾燥の速度、コテの流れ、気温や湿度が表面の表情へ現れます。
条件が作用する場所は、製品によって異なります。
■ 人の手、素材、環境、時間
制作には、図面には書き切れない情報があります。
削る順序。
道具の角度。
手に加わる力。
素材の密度。
乾燥する速度。
気温や湿度。
製作者がその瞬間に行う判断。
一つひとつはわずかな違いでも、それらが積み重なることで、結果は変化します。
同じ設計、同じ材料、同じ人から始まっても、まったく同じ条件をもう一度再現することはできません。
DUREEは、その意匠上の差異を均一化して消すのではなく、その家具が異なる時間を通過した痕跡として残します。

■ 自然の姿ではなく、生成される原理
DUREEが関心を持っているのは、自然物の見た目をそのまま模倣することではありません。
自然の石も、誰かが最終形を描いてつくっているわけではない。
土地の成分。
温度。
圧力。
水。
風化。
重力。
そして、長い時間。
複数の条件が重なることで、その場所にしか存在しない形が生まれます。
DUREEが人工物の中へ取り込みたいのは、石の外観そのものではなく、そのように形が生成されていく原理です。
自然と人工を対立するものとしてではなく、どちらも条件と時間によって生成される存在として捉える。
Rock Seriesも、石の姿を再現するための家具ではありません。
石が生まれる原理を、人間の制作時間の中へ翻訳する試みです。

■ Origin|生成される形への関心
DUREEのデザイナー、林大也がこの考え方に関心を持ち始めたのは、ブランドを立ち上げるよりもずっと以前、大学時代まで遡ります。
当時、Cinema4Dの物理演算を使い、物体を落下させ、衝突させ、破壊することで生まれるクラックや断片的な形を、建築や造形へ応用する試みを行っていました。
興味があったのは、破壊そのものではありません。
重力、速度、衝突する位置、物体の形、素材の設定。
複数の条件を与えることで、自分自身が一から描こうとしても生まれない形が現れる。
そして一度その現象が起これば、まったく同じ形をもう一度つくることはできない。
そこに強く惹かれていました。
重要だったのは、単に偶然によって予想外の形が生まれることではありません。
その瞬間に重なった条件によってしか存在できなかった形だからこそ、そこには固有の価値があるのではないか。
その問いは、大学を離れた後も形を変えながら残り続けました。
空間を設計する。
家具をつくる。
素材を削る。
塗る。
磨く。
実際の制作に関わるほど、かつてデジタル上で見ていたものと似た現象が、現実の素材や人の手の中にも存在することが見えてきました。
同じ設計から始めても、素材の状態、人の手、道具、環境、その瞬間の判断によって、最後に現れる形や表情は少しずつ変わっていく。
すべてを偶然に委ねるのでもなく、完成形のすべてを支配するのでもない。
形が生まれる条件を設計し、その条件を通過した時間を形として残す。
長く考え続けてきたこの関心が、家具という存在を通してひとつの思想として結びついたものが、DUREEです。

■ Digital / Hand|デジタルと手仕事
CG、3D、3Dプリントなどのデジタル技術と、人の手による制作。
DUREEでは、そのどちらか一方を正しいものとして選びません。
デジタルは、まだ存在しない形を探り、人の手だけでは直接検討しにくい造形や構造を可視化することができます。
一方、実物の素材に触れれば、デジタル上には存在しなかった条件が加わります。
素材の硬さ。
道具の感触。
手の動き。
その日の環境。
技術は完全な複製のためだけに使うものではなく、自分たちだけでは完全に描き切れない形が生まれる可能性を広げるためにも使う。
デジタルと手仕事は、そのための異なる方法です。

■ Trace / Irreversibility|痕跡と不可逆性
削った跡。
コテの流れ。
乾燥の差。
磨きの揺らぎ。
それらは、完成後に装飾として付け加えられた模様ではありません。
制作の過程で実際に起きた出来事の痕跡です。
一度削ったものを、削る前の状態へ完全に戻すことはできない。
乾燥した素材を、同じ瞬間へ戻すこともできない。
時間は一方向に進みます。
DUREEは、その不可逆性を欠点として隠すのではなく、その家具がどのようにつくられたのかを残す固有性として捉えています。
あの日、あの時、あの場所でしか生まれなかった形。
その一度きりの時間を、家具として残す。

■ Rock / Sabi / Kura|異なる条件、異なる現れ方
この思想は、すべての家具に同じ方法で現れるわけではありません。
Rock Seriesでは、削る順番、道具、人の判断、素材の状態が輪郭へ作用します。
Sabi Lounge Sofaでは、樹脂モルタルの乾燥、コテの方向、力加減、湿度、職人の判断が表面へ残ります。
Kura Cabinetでは、手仕事による表面と、光の角度、周囲の色、見る位置の関係によって、同じ物体でありながら見え方が変化します。
重要なのは、すべてを同じ手法でつくることではありません。
それぞれの素材や家具に対して、どのような条件がそのもの固有の存在を生み出すのかを考えることです。

■ Duration|完成した後も続く時間
家具の時間は、完成した瞬間に終わりません。
光。
傷。
触れられた跡。
置かれた場所。
そこで過ごした人の記憶。
制作された時間の上に、使われる時間が重なっていきます。
DUREEという名前は、フランス語で「持続」や「時間の長さ」を意味する durée に由来します。
つくられた時間を残しながら、その後も新しい時間を受け入れていく。
We design the conditions in which time takes form.
時間が形になる条件をデザインする。
DUREEについて
→ /blog/duree-furniture-brand
DUREE Official Website
→ https://duree.jp